お勤めの方が在職中に亡くなった場合、遺族が受け取る一時金・年金の課税関係は、次の4つのいずれかに整理されると考えられます。どれに当たるかは「どの制度からの給付か」「亡くなった時点で受給開始前か受給中か」「支給がいつ確定したか」で決まり、遺族が選ぶ受け取り方(一時金か年金か)そのものは、課税対象になるかどうかを原則として左右しません。
相続税の課税対象。退職手当金等(相続税法3条1項2号)なら500万円×法定相続人数の非課税枠あり。受給中死亡の継続受給(同項6号)は非課税枠なし。
公課禁止規定により相続税・所得税とも課税されない。国民年金基金の遺族一時金、厚生年金基金の死亡一時金、遺族基礎年金・遺族厚生年金など。
相続税の対象外で、受け取った遺族の所得税(一時所得)。死亡後3年経過後に支給確定した退職手当金等、未支給年金、雇用主が関与しない組合共済金など。
未受領給与や死亡後確定の賞与、確定拠出年金の5年経過後など。遺産分割の対象となり、500万円の非課税枠はない。
このページでは、非課税枠のうち「退職手当金等の非課税(500万円×法定相続人数)」を退職金枠、「生命保険金の非課税(同額)」を生保枠と表記します。いずれも相続人が取得した分にのみ適用されます(相続税法12条1項)。
主な給付ごとの課税関係の一覧です。詳細は後述の制度別解説をご覧ください。
| 制度・給付 | 受け取り方 | 時期・条件 | 相続税の扱い | 非課税枠 | 遺族の所得税 |
|---|---|---|---|---|---|
| 確定拠出年金(企業型DC・iDeCo)の死亡一時金 | 一時金のみ | 死亡後3年以内に支給確定 | みなし相続財産(退職手当金等) | 退職金枠あり | 非課税 |
| 3年経過後に支給確定 | 課税対象外 | - | 一時所得 | ||
| 5年間請求なし | 本来の相続財産 | 枠なし | - | ||
| 確定給付企業年金(DB)の遺族給付金 | 一時金・年金とも | 受給開始前(在職中)の死亡 | みなし相続財産(退職手当金等) | 退職金枠あり | 非課税 |
| 年金・一時金とも | 老齢給付金の受給中の死亡(残存保証期間分の継続受給) | みなし相続財産(6号・定期金) | 枠なし | 非課税 | |
| 国民年金基金の遺族一時金 | 一時金のみ | 受給開始前・保証期間中とも | 非課税(公課禁止) | - | 非課税 |
| 厚生年金基金の死亡一時金 | 一時金 | - | 非課税(公課禁止) | - | 非課税 |
| 企業年金連合会の死亡一時金 | 一時金 | 死亡後3年以内に支給確定 | みなし相続財産(退職手当金等) | 退職金枠あり | 非課税 |
| 中退共・特定退職金共済の遺族退職金 | 一時金(特退共は年金も) | 死亡後3年以内に支給確定 | みなし相続財産(退職手当金等) | 退職金枠あり | 非課税 |
| 会社の死亡退職金・自社年金 | 一時金・年金とも | 在職中の死亡(3年以内に支給確定) | みなし相続財産(退職手当金等) | 退職金枠あり | 非課税 |
| 継続受給 | 退職年金の受給中の死亡 | みなし相続財産(6号・定期金) | 枠なし | 非課税 | |
| 従業員組合・共済会の死亡共済金(雇用主の関与なし) | 一時金 | - | 課税対象外の可能性が高い | - | 一時所得 |
| 共済会経由の死亡退職金型給付(雇用主が掛金拠出) | 一時金 | 死亡後3年以内に支給確定 | みなし相続財産(退職手当金等)の可能性 | 退職金枠あり | 非課税 |
| 全労済・県民共済等の制度共済の死亡共済金(本人が掛金負担) | 一時金 | - | みなし相続財産(生命保険金) | 生保枠あり | 非課税 |
| 遺族基礎年金・遺族厚生年金 | 年金 | - | 非課税(公課禁止) | - | 非課税 |
| 未支給年金(本人の未受領分) | 一時金 | - | 課税対象外(遺族固有の権利) | - | 一時所得 |
| 未受領給与・死亡後確定の賞与 | - | - | 本来の相続財産 | 枠なし | 非課税 |
受給開始前(在職中)の死亡による給付は退職手当金等相続税法3条1項2号となり、相続人が取得した分に500万円×法定相続人数の非課税枠が使えます。これに対し、退職年金を受給中に死亡し、遺族が残存期間分の年金を継続して受け取ることになった場合(これに代わる一時金を受ける場合を含む)は、契約に基づかない定期金に関する権利相続税法3条1項6号相続税法基本通達3-29・3-46として課税され、退職手当金等ではないため500万円の非課税枠は適用されないと考えられます。同じ制度からの給付でも、亡くなった時期により非課税枠の有無が変わる点が、実務上最も重要な分岐です。
退職手当金等としてみなし相続財産になるのは、死亡後3年以内に支給が確定したものに限られます相続税法3条1項2号。支給額が3年以内に確定していれば、実際の支払が後になっても該当します相続税法基本通達3-30。3年経過後に支給が確定したものは相続税の対象とならず、受け取った遺族の一時所得として所得税の課税対象になります所得税基本通達34-2。
退職手当金等を年金(定期金)形式で受け取る場合も、退職手当金等として相続税の課税対象となり、非課税枠の適用があると考えられます相続税法基本通達3-47。受け取り方で変わるのは、評価方法(年金形式は年金受給権として相続税法24条により評価)と、その後の所得税の扱いです。相続税の課税対象になった一時金には所得税が課されず所得税法9条1項17号所得税基本通達9-17、遺族が毎年受け取る年金も、亡くなった方の勤務に基づいて支給されるものは所得税非課税とされています所得税法9条1項3号ロ所得税基本通達9-2タックスアンサーNo.1605。
遺族が受け取るのは死亡一時金のみで、年金形式の遺族給付は制度上ありません。死亡後3年以内に支給が確定すれば退職手当金等としてみなし相続財産(退職金枠あり)、3年経過後の支給確定なら遺族の一時所得、5年間請求がなければ本来の相続財産(枠なし)と、請求時期によって課税関係が変わる点が最大の特徴です。
確定拠出年金の給付は老齢給付金・障害給付金・死亡一時金の3種類で確定拠出年金法28条、死亡を事由とする給付は死亡一時金だけです。企業型の給付の規定は個人型(iDeCo)に準用されるため確定拠出年金法73条、企業型とiDeCoで課税関係に違いはありません。死亡一時金は、生前に受取人指定があればその方、なければ法定の順位(配偶者、生計維持されていた子・父母など)で支給されます確定拠出年金法41条。
退職手当金等としてみなし相続財産となり相続税法3条1項2号相続税法施行令1条の3第7号、相続人が取得した分には500万円×法定相続人数の非課税枠が適用されます。適用されるのは生命保険金の非課税ではなく退職手当金等の非課税の側です。会社からの死亡退職金と死亡一時金の両方がある場合は、合算して1つの非課税限度額を適用します。相続税の対象となるため、遺族に所得税は課されません所得税法9条1項17号。
死亡後3年経過後に裁定請求して支給が確定した場合は、みなし相続財産に該当せず、受け取った遺族の一時所得になると考えられます所得税基本通達34-2。さらに死亡後5年間裁定請求がないときは、死亡一時金を受け取る遺族はないものとみなされ、個人別管理資産に相当する金銭が亡くなった方の相続財産とみなされます確定拠出年金法41条4項・5項。この場合は本来の相続財産として課税され、退職金枠の適用はないと考えられます。
老齢給付金の受給権は死亡により消滅し確定拠出年金法36条1号、遺族が年金を引き継ぐ仕組みはありません。残余の個人別管理資産は死亡一時金として遺族に支給され、課税関係は受給開始前の死亡と同じです。受給開始の前後による本質的な違いは生じません。
裁定請求の時期で課税区分が変わるため、相続税申告の実務では死亡一時金の請求と支給確定の時期の管理が重要になります。
受給開始前(在職中)の死亡による遺族給付金は、一時金でも年金でも退職手当金等としてみなし相続財産となり、退職金枠が使えます。老齢給付金の受給中に死亡し遺族が残存保証期間分を受け取る場合は、6号の定期金に関する権利となり非課税枠は使えません。亡くなった時期で非課税枠の有無が変わる点が最重要ポイントです。
遺族給付金は規約に定めがある場合に支給される給付で、規約の定めにより年金または一時金として支給されます確定給付企業年金法29条2項・47条から49条。受給者は規約で定める遺族(事実婚の配偶者を含み得る)で、遺族固有の権利として取得するため、本来の相続財産(遺産分割の対象)にはなりません。
遺族給付金は一時金形式・年金形式とも退職手当金等としてみなし相続財産となります相続税法3条1項2号相続税法施行令1条の3第4号。年金形式で受ける場合も、定期金またはこれに準ずる方法で支給される退職手当金等として2号のまま課税されるため相続税法基本通達3-47、退職金枠の適用があると考えられます。年金形式の場合の年金受給権は相続税法24条(解約返戻金相当額・一時金相当額・予定利率による複利年金現価のうち最も多い金額)で評価します。遺族が毎年受け取る年金は、亡くなった方の勤務に基づく遺族年金として所得税非課税です所得税法9条1項3号ロ所得税基本通達9-2タックスアンサーNo.1605。
保証期間付の年金を受給中に死亡し、遺族が残存保証期間分の年金またはこれに代わる一時金を受ける場合は、契約に基づかない定期金に関する権利としてみなし相続財産となります相続税法3条1項6号相続税法基本通達3-29・3-46タックスアンサーNo.4123。退職手当金等には該当しないため退職金枠は使えず、生命保険金でもないため生保枠も使えません。評価は相続税法24条により、毎年の年金の所得税は非課税です所得税法9条1項3号ロ。
遺族一時金は相続税も所得税も課税されないと考えられます。受給開始前の死亡でも保証期間中の死亡でも結論は変わらず、500万円の非課税枠を消費することもありません。同じ死亡一時金でもiDeCoは相続税課税、国民年金基金は非課税と正反対になります。
国民年金基金の遺族への給付は一時金のみで、年金形式はありません国民年金法128条1項。遺族一時金には、租税その他の公課を課することができないとする公課禁止規定が準用されるため国民年金法25条・133条、相続税・所得税とも課税されないと整理されます。退職手当金等の政令列挙(相続税法施行令1条の3)にも国民年金基金の一時金は含まれていません。中途脱退者等に国民年金基金連合会から支給される一時金も同様です国民年金法137条の21。
なお、会社員(第2号被保険者)は国民年金基金の加入員資格を失うため国民年金法127条3項1号、在職中の会社員の死亡で実際に問題になるのは、過去に自営業等(第1号被保険者)だった期間に加入していた元加入員としての遺族一時金です。保証期間のない終身年金(B型)のみの受給中の死亡では遺族一時金が支給されない場合があるなど、支給の細目は各基金の規約によります。
公課禁止規定の有無と政令列挙の有無により、iDeCoの死亡一時金(課税・退職金枠あり)と国民年金基金の遺族一時金(非課税)で結論が正反対になります。混同しやすい重要ポイントです。
厚生年金基金の死亡一時金は非課税、企業年金連合会・中退共・特定退職金共済・小規模企業共済からの死亡給付は退職手当金等(退職金枠あり)です。同じ企業年金の世界でも支給主体によって結論が分かれます。
基金が支給する死亡一時金は、厚生年金保険法側の非課税規定(公課禁止)により、みなし相続財産にならず相続税は課税されません(国税庁質疑応答事例「厚生年金基金が支給する死亡一時金に係る退職手当金等受給者別支払調書の提出義務」)。国から支給される遺族厚生年金・遺族基礎年金も非課税です厚生年金保険法41条2項国民年金法25条。亡くなった方本人が受け取るはずだった未支給年金は、遺族固有の権利として相続税の対象にならず、遺族の一時所得となります(国税庁質疑応答事例「未支給の国民年金に係る相続税の課税関係」所得税基本通達34-2)。
中途脱退や制度終了で年金原資が企業年金連合会に移換されていた場合に遺族が受ける死亡一時金は、退職手当金等としてみなし相続財産となり相続税法施行令1条の3第5号・6号、退職金枠の適用があると考えられます。厚生年金基金本体からの死亡一時金が非課税であるのと扱いが異なる点に注意が必要です。
中小企業退職金共済(中退共)から遺族に支給される退職金、特定退職金共済団体からの遺族一時金・遺族年金は、退職手当金等としてみなし相続財産となり相続税法施行令1条の3第9号、退職金枠の適用があります。小規模企業共済の死亡による共済金も同様です相続税法施行令1条の3第10号。
退職給与規程等に基づく死亡退職金・功労金は退職手当金等の基本形です相続税法3条1項2号相続税法基本通達3-18・3-19。自社年金として年金形式で支給しても退職手当金等のまま課税されます相続税法基本通達3-47。退職後に自社年金を受給中に死亡し、遺族が継続受給する場合は6号の定期金に関する権利となり、非課税枠はありません相続税法基本通達3-29。
雇用主が関与しない従業員組合・労働組合の死亡共済金は、相続税の課税対象外(遺族の一時所得)となる可能性が高いと考えられます。雇用主が掛金を拠出する共済会経由の死亡退職金型給付は退職手当金等(退職金枠あり)、全労済・県民共済等の制度共済はみなし生命保険金(生保枠あり)と、支給主体と掛金の負担関係で結論が分かれます。
組合員の会費・掛金のみで運営される労働組合・従業員組合・互助会からの死亡共済金は、みなし生命保険金の対象となる共済契約の政令列挙相続税法施行令1条の2に該当せず、雇用関係に基づく給与でもないため退職手当金等にも該当せず、相続税の課税対象外となる可能性が高いと考えられます。この場合、受け取った遺族の一時所得として所得税の課税対象になります所得税基本通達34-1(5)(東京国税局文書回答事例「認可特定保険業者が行う特定保険業の給付金等に係る課税上の取扱いについて」が同様の整理を示しています)。一時所得には特別控除50万円と2分の1課税の仕組みがあるため、少額の共済金では実際の税負担が生じないことも多いと考えられます。
雇用主が福利厚生団体に掛金を納付し、その団体が従業員の退職(死亡退職を含む)について退職手当金等を支給することを約した契約に基づく給付は、退職手当金等に該当する可能性が高く相続税法施行令1条の3第9号相続税法基本通達3-27、その場合は退職金枠の適用があります。共済会の実態(誰が掛金を負担し、どんな規程に基づくか)で判定が変わります。
労働組合経由で加入していても、全労済(こくみん共済coop)や県民共済など消費生活協同組合連合会等の制度共済の死亡共済金は、政令列挙に含まれる共済契約相続税法施行令1条の2第1項3号に基づくものであるため、亡くなった方が掛金を負担していた部分はみなし生命保険金として相続税の課税対象となり相続税法3条1項1号、生保枠(500万円×法定相続人数)の適用があります。
雇用主等から受ける弔慰金・花輪代・葬祭料等は、実質的に退職手当金等に当たる部分を除き、業務上の死亡のときは死亡当時の普通給与(賞与を除く)の3年分、業務上の死亡でないときは半年分に相当する金額まで弔慰金として相続税の課税対象にならず、超える部分が退職手当金等として扱われます相続税法基本通達3-20タックスアンサーNo.4120。
労働組合・共済会など雇用主以外からの弔慰金は、この形式基準の直接の対象ではなく、社会通念上相当と認められる範囲のものは所得税非課税所得税基本通達9-23、個人からの香典で社会通念上相当なものは贈与税非課税相続税法基本通達21の3-9とされ、相続税の課税対象にもならないと考えられます(国税庁質疑応答事例「贈与税の対象とならない弔慰金等」)。
あてはまるものを順に選んでいくと、相続税の課税区分・非課税枠の有無・遺族の所得税の扱いと、その根拠・解説が表示されます。
一般的な取扱いに基づく簡易判定です。実際の判定は、各制度の規約の内容、支給主体、掛金の負担関係、支給確定時期の事実認定によって変わることがあります。最終判断は、③タブの根拠条文・通達の原文の確認を前提としてください。